「メールにいがた」掲載の、図書選定委員によるリレーコーナーの抜粋です


■2014年12月号 鈴木 桂子(すずき けいこ)委員


「古典力」 斎藤孝著 岩波新書(2012年)


 私の住んでいる地区の集会所で近所の仲間数人が月に一回集まり、かれこれ十年近く
続けている読書会があります。その会で最近出会った一冊がこの「古典力」です。
耳慣れない題名から堅苦しい内容を想像するかも知れませんが、そうではありません。
 この本での古典とは古文のことではなく、さまざまな領域で人類の遺産と呼べるような
著作のことです。それは時代を超え時の流れの試練に耐えて人々に敬愛され読み継がれて
きたものだけに、精神の核といえるものを心に形成してくれる質の高い生命力を持っています。
電子メディアの急速な発達によりどんな情報でも検索すれば簡単に引き出せる、便利さの中で
教養や判断力が向上し精神力を身に付けたつもりになりがちな現代にこそ、千年万年の長い
年月読み継がれてきた古典を読むことにより、生命力を育む出会いを見つけ、活用する
古典力が必要なのです。
 読み方についても、いきなり原文を読むより現代語訳を先に読み、内容などを把握してから
原文を味わう順序にすれば読み易く、更に「クライマックス読み」、「さかのぼり読み」、
「パラパラ断片読み」など工夫すると作品の魅力にも触れることができて、多くの作品に
なじむことが出来るといわれています。
 何から読んでいいのか分からないという人のために、著者が古今東西の古典の中から
選び出して紹介した「マイ古典にしたい五十選」は大変興味深いものです。時代や社会を
変えた一冊としてダーウィンの「種の起源」、ガリレオの「星界報告」、デカルトの
「方法序説」。更に「精神分析入門」、「共産党宣言」、「万葉集」、「徒然草」、
「おくのほそ道」等々・・・・・・。内容や要旨の分かりやすい解説にひかれ、
敬遠しがちだった古典を改めてひもとくきっかけを与えてくれるかも知れません。
 なお、著者はBSNテレビ「あさチャン!」番組にも司会者として出演されています。
点字:無、デイジー:7時間55分


■2014年10月号 石川 登志子(いしかわ としこ)委員


「ちきゅうがウンチだらけにならないわけ」 松岡たつひで著 福音館書店(2013年)


 「ばぁば ウンチの本を読んであげるよ。」と、桃ちゃんがニコニコしながら持って
来たのがこの本でした。いつも桃ちゃんの創作話に引っかかっている私は、「えー!
そんな本あるわけがないでしょ。今日はだまされないよ。」と言ったけど、桃ちゃんは
「本当だよ。本当にウンチがいっぱい書いてある本なんだ。」と大真面目。
それで今回は、6歳の孫から読んでもらった「ちきゅうがウンチだらけにならないわけ」を
紹介します。
 主人公の僕はフレンチブルドックです。
女の子と赤いリードにつながれて散歩しているときに、路上に放置されたウンチを
見つけました。「誰!?ウンチをそのままにしているのは!」と女の子が叫びました。
そこでフレンチブルドックは考えます。僕はウンチを人に拾ってもらうけど、カラスは人に
拾ってもらわない。そういえば、ウサギもカエルもオタマジャクシもカタツムリも毛虫も
トカゲもみんなウンチを人に拾ってもらわない。何でウンチをしたままなんだろう?
他の生き物のウンチが気になって来て、僕は犬図書館に行って調べてみることにしました。
本のページをめくるたびに、いろんな生き物とそのウンチの絵があるそうで、図鑑を見ている
桃ちゃんは楽しそう。「うわー、大きなウンチ。こっちはとても小さいうんち。ウサギのは
コロコロ」とクスクス笑いながらも、本文を読んで挿絵の説明をして、桃ちゃんの音訳は
なかなか上手。
 へー、木の上で生活する生き物はたいてい木の上からウンチをするのに、なまけものは
わざわざ地上に降りて来てするんだって。じゃぁ、なまけものは怠け者じゃないのかな。
地上で、木の上で、空中で、水中で、生き物はいろんなところでウンチをするのに、
どうして地球はウンチだらけにならないんだろ?
 そして次は、ウンチの循環について書かれています。地上のウンチは雨に溶けて土に
しみこみ、やがて植物の大切な栄養になっていくこと。海では海藻の栄養になったり
小さな生き物の餌になったりすること。ウンチに隠れて育つ生き物もいること。種を運ぶ
役目もすることなどなど。ウンチが大いに役立っていることがわかります。
 そして最後のページでフレンチブルドックは言います。「ウンチはすごく役に立つんだ。
ウンチはいろいろな動物や植物に使われてなくなっちゃうんだね。
だけど、僕のウンチはごみ箱に捨てられ、人のウンチは水に流されてしまう。
誰かの役に立っているのだろうか?」
 桃ちゃんとばぁばも、「誰かの役に立っているのだろうか?」と考えてみましたが、
答えは出ませんでした。「ばぁばの子供の頃は、ウンチは畑に撒いて肥やしにしたし、
道には牛や馬の糞が当たり前に落ちていたよ。馬の糞を踏むと背が高くなると、誰かが
言ったので試したけど、あれは嘘だったみたい。」そんな話をしたら、桃ちゃんに
ケタケタと笑われました。
 はい、「ウンチ」を連発して、お食事中の方には大変失礼いたしました。38ページの
この絵本、動物や鳥や魚など、いろんな生き物がきれいなイラストで書かれているそうです。
是非、お子さんやお孫さんと読んでみてください。
点字:全1巻、デイジー:47分


■2014年6月号 吉倉 千恵(よしくら ちえ)委員


「植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫」 中公新書2174 田中 修著


 カバーに黄色いバナナが一本、その皮の部分に「宿題をしたあとで、食べてね!」と
書かれている本を見つけました。
 誰のいたずら?なにで書いたの?と思いながら読んでみると、バナナの皮に含まれて
いるポリフェノールやポリフェノール酸化酵素により、皮の表面に針金などで傷を
つけて時間がたつと、ポリフェノール酸化酵素のはたらきで、ポリフェノールが
黒褐色になり、かなり鮮明に文字が浮かびあがる仕組みを利用したものでした。
 植物は、虫などに葉っぱをかじられて傷がつくと、病原菌の侵入を防ぐため、傷口を
黒い物質で固めてしまうのだそうです。「ハガキノキ」と呼ばれる植物があり、
葉っぱは、長いものなら長さ約20センチ、幅7から8センチでかなり大きいものです。
その裏面に、釘か細い針金で文字を書くと、初めはうっすらとだけ文字が見えますが、
数分も経たないうちに文字の黒みが増し、くっきりと浮かびあがります。
これが、郵便の「葉書き」の語源と言われているようです。正式名は「タラヨウ(多羅葉)」。
郵政省(現・日本郵便)が1997年に「郵便局の木」と定め「シンボル・ツリー」と
して、東京中央郵便局や各地の郵便局前に植栽されているそうです。
 他にも、身近な植物の不思議がいっぱい!アジサイやキョウチクトウ、アサガオなど
毒をもつ意外な植物や、長い年月をかけて巨木を枯らすシメコロシノキなどなど・・・
植物の不思議や、動物たちには真似できないパワーやすごさをやさしく解説してくれています。
 自然にふれる機会の多くなるこれからの季節、身近な植物の不思議を実感できる
絶好のチャンスです。
 点字:全3巻、デイジー:6時間53分


■2014年2月号 斉藤 五月(さいとう さつき)委員


「ランチのアッコちゃん」 柚木麻子著 双葉社(2013年)


タイトルから「ひみつのアッコちゃん」のようなかわいらしいアッコちゃんが
登場するお話と思いきや、全く違う、長身で男勝り、厳しくてちょっと怖い上司
「アッコさん」。
色々あって元気がない主人公、三智子のもとに、「1週間、私のお弁当を作りなさい。」と、
指令が!その後はアッコさんが色々なランチを用意してくれるのですが、そのおかげで
三智子は元気を取り戻し、成長し、自立もしていきます。
この上司のアッコさん、言葉はきついですが部下をしっかり見てくれ、心配もし、
慮ってくれている人・・・。三智子はアッコさんの心遣いとパワーで、孤独で寂しかった
気持ちが癒されていくのに気が付きます。
表題作ほか、4つの短編からなる一冊で、お弁当やほかのお料理の描写でヨダレが
出そうになる、読んでおいしく、あたたかい短編集です。
点字:2冊 デイジー:4時間18分


■2013年12月号 小川晃(おがわ あきら)委員


私のおすすめの本


講談社から出版されている書籍にブルーバックスという新書があります。
この本、さまざまな分野の科学の基礎知識をわかりやすい文章で説明してくれます。
初めてこのシリーズに出会ったのは、高校生の時。
「生物学」担当の先生に科学に関する本を読んで読書感想文を書くように言われました。
当時から小さい文字を読むのが苦手だった私は、教科書以外の本は小説を含めほとんど読んだことがありませんでした。
しかたなく本屋さんに行って、選んだのがなぜかブルーバックスの「光合成」(おそらく絶版)の本でした。
とても内容は難しいのですが、説明がわかりやすく、珍しく最後まで読んだのを覚えています。
 それ以来、医学や科学の専門書を読む前には、一般向けに書かれている入門書としてブルーバックスを読むようにしています。
今まで読んだ中から3冊をおすすめします。


「新・脳の探検(上・下)」 フロイド・E・ブルーム著 講談社ブルーバックス(2010年)
脳・神経系の基本的な構造と働き精神活動や行動、精神的疾患との関連について解説しています。
点字データ製作中 

「免疫とはなにか」 野本亀久雄著 講談社ブルーバックス(1987年)
一度かかった病気には二度とかからない免疫の仕組みをわかりやすく解説しています。
カセット標準 全5巻

「ジムに通う前に読む本」 桜井静香著 講談社ブルーバックス(1987年)
ジムで行われるさまざまな運動について、その理論と効果を解説してくれます。
点字:4冊、デイジー:5 時間55分


■2013年10月号 市川能里子(いちかわ のりこ)委員


「チルドレン」 伊坂幸太郎著 講談社(2004年)


本の音声訳に携わるようになって、目の不自由な方々と接する機会が多くなった。
そういう時は、友達や家族と接するように自然に、さりげなく、余計なお手伝いをしないように…。
でも、そう思っている時点で既に不自然さが生まれているような気がする。
伊坂幸太郎の「チルドレン」は、表題作を含む5つの短篇が収められているが、
巻末で作者が述べているように全部で一つの物語になっている。
全篇に登場する青年・陣内がとてもいい。
陣内はある事件で目の不自由な青年長瀬と知り合い、友達になる。
その長瀬との接し方が実に素敵だ。自然だ。
時には、長瀬が全盲ゆえに社会から優遇されていることに腹を立てる。
陣内曰く「何でお前だけ特別扱いなんだよ、ずるいじゃねぇか!」
陣内の他の友達も魅力的だ。目の見えない長瀬に服選びに付き合ってくれと頼む青年。
長瀬に寄り添う盲導犬に嫉妬する長瀬の恋人。
その長瀬も爽やかだ。長瀬の一つ一つの言葉から、目が見えなくても見えるもの、目が見えていても見えないものに気付かされる。
読み進めると、陣内は目の不自由な人ばかりでなく、動物や、問題を抱えて家庭裁判所に来る子供たちとまで自然に付き合っている。
特別扱いしない。媚びない。そこがまたたまらない。
陣内の自然な態度にため息をつきながら、「あの時あの人にあんなことを言ってよかったのかなぁ、気に障っていないといいけど…」と、私は今日もクヨクヨしている。
点字:4冊、デイジー: 7時間35分


■2013年8月号 石川登志子(いしかわ としこ)委員


「唐傘一本」 小松重男著(ベストセラーズ 2011年)


 ひょうひょうとしたユーモアとエロチシズム、つい「あははっ!」と笑ってしまいます。
貧乏御家人の末っ子の清兵衛を、先代が後継ぎに望んだ理由はといえば、「無口で、おとなしく、律義」だったからである。
当時、力をつけてきた町人にとって、貧しい武士など奉公人と同然で、しおらしかった妻も、「何かあったら唐傘一本で出て行っていただきますよ」が口癖になる始末。
そんな妻が浮気を疑い、夫の股間にうどんこをまぶして外出させた。さすがの清兵衛も怒りがこみあげて、浮気の決意をするが…(表題作)。
浮世をくそまじめに生きる男の哀しい人生。全4篇を収録(おんみつ侍、唐傘一本、鰈の縁側、シベリア)。
 5月に新潟市内で朗読会があり、その時の演目が小松重男の「間男三昧」でした。
きわどいタイトルにニヤリとしながら、朗読に聞き入りました。
「間男三昧」をしている女、浮気をしては離縁されるのを繰り返している女なのに、なぜか憎めない。
「唐傘一本」の清兵衛も、清兵衛を尻に引きっぱなしの女房も、「何!この夫婦!」と多少イライラしつつもやはり憎めない。
小松重男の書く人々は、見苦しくてもかっこ悪くても、みんな自分に正直に生きている感じがしました。
小松重男は、1931年新潟県生まれです。「唐傘一本」がお気に召しましたら、是非、彼の他の著書もお読み下さい。
点字:3冊、デイジー: 6時間26分


■2013年6月号 渡辺勇(わたなべ いさむ)委員


 「出世花」 高田郁(たかだ かおる)著 祥伝社文庫(2008年)


不義密通相手と出奔した妻を敵討ちするため、放浪の旅に出た夫・矢萩源九郎(やはぎ げんくろう)とその娘・おえん(艶)。
しかし、6年後、2人は江戸近郊の竹林で飢えて路傍に倒れ伏す。そこへ通りかかった老僧に、
源九郎は「不義密通を犯した妻の血を引く娘に、なにとぞ善き名前を与えてくだされ。」と言い残し息絶えた。
 老僧は、娘の名を仏縁のおえん(縁)に改める。娘は老僧の寺に身を寄せることとなり、その寺で懸命に働く。
その寺は墓寺で、亡くなった人の湯灌(ゆかん)をし、荼毘(だび)にふすことを行っている。
 寺に引き取られて5年、15歳になったおえん(縁)は、老僧の手を見せてもらった。
あの日、息絶えた父の背中をこの手が洗ってくれた。この上なくやさしく丁寧に父の背中を洗い、亡骸を洗ってくれた手。
ぽたぽたと涙が溢れ出た。そして湯灌(ゆかん)を一生の仕事としてやっていこうと決意する。
以後、三昧聖(さんまいひじり)と呼ばれる湯灌の仕事をしながら、様々な苦難を乗り越えて成長していく。
少女が美しく成長する姿を、透明感溢れる筆致で描く感動の時代小説だ。
点字:4冊、デイジー:8時間53分


■2013年4月号 斉藤五月(さいとう さつき)委員


 「食材を使い切るのがおもしろくなる本」 青木敦子(アオキ,アツコ)著 扶桑社文庫(2009年)


「沢山いただいたけど、どうやって保存しよう?」、「どうやって使い切ろうか?」などなど、困ったことはありませんか?
私はよくあるんです…。でも、なかなか解決できずにいました。
この本と出合い、お料理のレシピ本というより食材のマニュアル本といった感じで、なるほどと関心したり、ちょっと驚いたりと面白く読ませてもらいました。
特に今はエコの時代…。無理なく無駄なく使いきれたらと考えます。
なにより食材って使い切れると気持ちがいい! 嬉しい! ですよね?
1つでも2つでも、これだ!と思うものが見つかればと思います。ぜひ1度読んでみてください。
出がらしのお茶の葉やジャガイモの皮。どれも当たり前に捨ててしまう方が多いですよね?
でも、食材のことを深く知るようになると、今までどれだけもったいないことをしていたかと思ってしまいます。
出がらしはおいしいお茶の天ぷらになりますし、ジャガイモの皮は、食用油の寿命をぐっと延ばすチカラを持っています。
そしてもう1点、捨てていた余りモノの方こそ、栄養価が高いものもあるのです。
本書をお読みになれば、いかに食材を無駄にしていたのかと驚かれることでしょう。
ぜひ、今日から目の前にある食材をとことん使い切ってあげてください。この本を読むと食材の使い道が劇的に広がります!
点字:製作中、デイジー:完成


■2013年2月号 鈴木圭子(すずき けいこ)委員


 「阿武隈共和国独立宣言」 村雲司(ムラクモ,ツカサ)著 現代書館(2012年)


昨年の十月初旬、新潟日報の『現論』に新潟市出身の文芸評論家・斎藤美奈子氏の書かれた「脱原発論」という
論文の中に引用されていたことにより私はこの著書を知りました。
東日本大震災からやがて二年目を迎えようとしているとき、国の「2030年代に原発稼働ゼロ」の方針が見送られた矢先でした。
この小説は、東京電力福島第一原発の事故で「帰宅困難区域」に指定された福島県相馬郡阿武隈村(実在しない架空の村)の老人達が日本政府に抗議して独立を宣言するという挑発的で刺激的な内容なのです。
国民の条件は65歳以上であること。汚染された大地に住み続け、自分たちが滅びてゆく姿を見せることにより
原子力がいかに危険か身をもって知らしめるために捨て身の決意をした者の結集である。
この独立を保障するための「核武装」を宣言する。それには高レベルの放射性物質による汚染土を乾燥させ三尺玉に詰めたものを何百発も用意している。
この独立国を鎮圧しようとすれば躊躇なくこの三尺玉を打ち上げる・・・等々の造反作戦。
これらはすべてフィクションですが、現在進行中の出来事とリンクしたストーリーです。
現実には帰還困難地域に指定され、避難生活を余儀なくされている多くの人達、とりわけ老人達の苦しみや怒りを想うと胸が痛むばかりです。
小説の中の「阿武隈村」が独立する2013年3月11日が迫っています。
点字:製作中、デイジー:製作中


■2012年12月号 市川能里子(いちかわ のりこ)委員


「新潟のおせんべい屋さんが東京の女子中学生にヒット商品づくりを頼んだらとんでもないことが起こった!?」
ROCKGIRLS編著+ツッコミ役 澤本嘉光  かんき出版


今年の夏、とんでもなく長いタイトルのこの本が発売されたと新聞で知り、「ああ、あのおせんべいのことね!」とピンときました。
  昨年、スーパーの店頭に「東京の女子中学生とのコラボ」という広告文と共に山積みになって置かれていた、あのおせんべい・・・。
もちろん、私も買わせていただきました。おいしくて、何度も。
おせんべい屋さんとは、「味しらべ」とか「黒豆せんべい」「ソフト豆もち」「えびカリ」など、
皆さんもその商品を絶対食べたことのある新潟県長岡市の岩塚製菓です。
東京の女子中学生とは、中高一貫教育の品川女子学院の生徒さんということでした。
その新商品は、「ペパっと」というネーミングも若々しい上に、黒胡椒なんかがピリッと効いて若々しい味で、パッケージもかわゆい・・・。
「さすが若い女の子が関わるといい感じだなー」と感心したものでした。
この長〜いタイトルの本は、その新商品ができるまでを記録したものです。
この本を読んでびっくりしました。コラボって言ったって、ただ流行に敏感な中学生ギャルが、新商品開発に悩んでいるオジ様社員にご意見を述べて、
若々しいおせんべいができたのでしょうと勝手に思い込んでいたのですが、そんな生易しいものではなかったのです。
田舎に住んでいる私は何にも知らなかったのですが、この品川女子学院、通称品女(しなじょ)さん、知る人ぞ知るスーパーパワフルな学校なのです。
生徒たちが28歳になった時に社会でしっかり活動し続けているための教養、企画力、開発力、コミュニケーション力を身に着けさせる「28プロジェクト」なるものを実践しているのです。
生徒さんたちが真剣に商品開発に取り組み、クラスや学年対抗で企画力やプレゼン力を競い合う姿には感動させられました。
当然企業とのコラボもありで、東京の有名な会社との仕事に関われる可能性もあるのですが、新潟県の、しかもおせんべい屋さんとコラボすることに生徒さんたちも最初は戸惑ったようです。
対する岩塚製菓のコラボチームは、こちらも28歳前後の女子社員で構成されています。
岩塚製菓の女子社員、つまり岩女(いわじょ)、それを英語にしてROCK GIRLS。彼女たちも女子中学生とのコラボに戸惑いながらも、次第に中学生のアイデアの新鮮さに意欲が高まっていきます。
本の構成は、開発の段階ごとに7章に分かれ、それぞれの章ごとに品女さんのコラボ日記、岩女さんの本音トーク、有名なCМプランナー澤本嘉光さんのツッコミが掲載されています。
本が面白くて、是非ともこの「ペパっと」を食べたくなったあなた!残念ながら「ペパっと」は今年の9月をもって発売終了となりました。悪しからず・・・・・
点字:製作中、デイジー:製作中


■2012年10月号  吉倉千恵(よしくら ちえ) 委員


「七夜物語」 上・下 川上弘美著


小学校4年生のさよはお母さんと二人暮らし。本好きの少女だ。
学校の図書室には、同じクラスの仄田(ほのだ)君も来ていてよく会う。
彼も本が好きで、何でもよく知っている男の子だが、運動が苦手で、みんなから少しだけ遠巻きにされている。
ある日、さよは、学校の帰りに寄った区立図書館で古びた一冊の本に出合う。
表紙の色は、深いあおみどり色で、扉には女の子と男の子の絵が描かれていた。
『七夜物語』それが本の題名だった。表紙に描かれている男の子と女の子が、ひょんなことから見知らぬ世界に紛れ込み冒険するという
、 たいそうわくわくするお話・・・のはずなのだが不思議なことに、
本を閉じて棚に戻し図書館を出ると、その日読んだ本の中身を全く思い出すことができない
。 だが、再び図書館にやってきて棚から本を取り出したとたんに、前にどのページまで読んだのだったか、
物語はどこまで進んだのか思い出すことができる・・・という何とも不思議な本だ。
本に出てくる男の子は仄田君、女の子はさよ。二人は不思議な夜の世界へと迷い込む。
大ネズミのグリクレル、甘い眠り、若かりし父母、ミエル・・・・七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は?
 今の子供社会は、「みんな違ってあたりまえ」がなかなか通用しにくいようですが、
この本に登場する個性派の二人と一緒にあなたも冒険してみましょう。
きっと、今までとは違った自分に出会えるかもしれませんよ!
点字製作中、デイジー(上)9時間21分、デイジー(下)製作中


■2012年8月号 石川登志子(いしかわ としこ)委員


「聞く力―心をひらく35のヒント」  阿川佐和子著


 情報のほとんどを耳から入れている私は、「聞く力」のタイトルを見たとき、読解力の付け方を教える本かと思いました。
教科書みたいに難しいのかな?だったら苦手だわと、内容紹介を見てみました。
著者は名インタビュアーとして雑誌やテレビで活躍している阿川佐和子さんで、「人の話を上手に聞く方法を紹介!聞き上手は話し上手!」とありました。
そっかぁ、人の話を上手に聞けるようになるのかと読書開始。
阿川さんは、どうやったら相手からおもしろい話を引き出せるかいろいろと工夫していて、
「こんなに自分の話を面白そうに聞いてくれるなら、もっと話しちゃおうかな。あの話もしちゃおうかな。そういう聞き手になろう。」とインタビューを続けているそうです。
普段の取材で気をつけていることとして、「相づちの極意」、「楽しそうに聞く」、「事前に用意する質問は3つまで」、「安易に『分かります』とは言わない」などを上げています。
気難しい人、口の重い人、いろんなタイプの有名人から自然な流れで話を引き出していて、エピソードや失敗談も満載。さわやかな読後感でした。
それでね、これを読んで私が聞き上手になれたかと言いますと、いやいや、そんなに簡単にはいきませんでした。
今でも相変わらず、「母さんは人の話を聞いていない!話の腰を折るな!と家族に言われています。
阿川さんの会話のツボ通りに所々に相槌も打つし、楽しそうに聞いているのになぁ。やっぱ、相手の話を最後まで聞かないで自分のことを話し出すのが悪いのかな?と反省。
だけどね、「今の話題に関係ないことを言わないで!」とブーイングする家族に言いたい。
頭に浮かんだことをすぐに捕まえて口から出さないと、何をしゃべりたかったのか忘れてしまう母さんの事情も理解して欲しいわ。
そうそう、ここでは名インタビュアーとして紹介されている阿川さん、エッセイストとしても素敵です。
檀ふみさんとの往復エッセイ、「ああ言えばこう嫁行く」もお薦めです。
点字製作中  デイジー5時間49分


■2012年6月号 滝沢和子(たきざわ かずこ)委員


「考えだすと妙に気になる クラシック音楽 素朴な大疑問」
PHP研究所 クラシックジャーナル編集部編著


 最近替えたばかりの携帯の着メロを7歳の孫が口ずさんでいる。ショパンのポロネーズ第6番変イ長調「英雄」です。
テレビコマーシャルに曲が流れているとつい聞き耳を立てている自分。(私の好きな曲)の1節なのです。
それがまたクラシックの名曲なんですね。ところでクラシック音楽に、かたいイメージを持っておられる方にぜひ読んでいただきたい本をみつけました。
ちょっと気楽に音楽史の流れや作曲家を知るキッカケとなるエピソード。裏話的なものなどが盛り込まれた本です。
ちょっとのぞいてみると、第1章ではクラシック音楽とは? ロマン派の何処がロマンチック?などと言った疑問について。
第2章 作曲家たちの気になる疑問。 シューベルトの名曲はなぜ「未完成」なのか。ベートーヴェンは、どの程度耳が聞こえたのかなど、
えっ? あの曲にそんなことがあったのかと思う目次がならんでいます。
  標題に「革命」と名付けられたショパンのピアノ曲。献呈されたリストが名付けたもの。
ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、当局に批判されていた彼が反省して、革命の勝利を描いた曲。日本では勝手に「革命」と呼んだのだそうです。
ベートーヴェンのピアノソナタの「月光」「熱情」なども、みんな他人が勝手に名付けたもので、本人がつけたのは「悲愴」と「告別」だけなのだそうです。
第1章から第3章までとコラムからなっています。全く肩が凝らないで、クラシック音楽を聴くのが何倍も楽しくなります。
さあ! この本を読んで レッツGO! コンサートへ。
点字版、デイジー版を製作しますので、貸し出しを希望される方は当館へお申込みください。


■2012年4月号 渡辺勇(わたなべ いさむ)委員


「親指さがし」 山田悠介著


 いまから20年前、山梨県にある別荘の中で当時20歳の娘がバラバラの死体となって発見された。
その娘の名を箕輪スズという。しかも、その近くに犯人と思われる男の死体が同じ状態で置き去りにされていた。
 バラバラになった部分は回収されたが、不思議なことに二つの死体の左手の親指だけが根元からすっぱりと切り取られていた。
その周辺をくまなく捜索したが、遂に見つけ出すことができなかったのである。
 その後、若者たちの間に親指さがしという遊びが流行りだし、
その遊びに関わった者は必ず変死をするということで警察当局もやっきになって犯人捜しをしたが、
杳として手がかりを一つもつかむことができなかった。
 ある日のこと、ビルの管理人の眼を盗んで屋上に忍び込んできた若者グループ5人がいた。
その中の一人「田所 由美」(たどころ ゆみ)という娘が「親指さがし」をやってみないかと言いだした。
過去の忌まわしい事件を知っている4人はあまり乗り気ではなかったのだが、
そこは興味半分ということもあって、それではやってみようかということになった。
円になって座り自分の右手で隣の人の親指を隠す。
そうして殺された娘と同じ気持ちになってバラバラにされていくという想像をするのだ。
すると幽体離脱現象で娘の別荘へ行くことができるというのである。
さてここからは読者諸君にお任せすることにしよう。
(点字3冊、デイジー6:08、カセット4巻)


■2012年2月号 林章子(はやしあやこ)委員

「どんな小さなものでもみつめていると宇宙につながっている 詩人 まど・みちお 100歳の言葉」 まど・みちお著


 ぞうさん、やぎさんゆうびん、1年生になったら、などの童謡を知らない人は多分いないでしょう。 この歌の作詞者が、まど・みちおさんです。
 まどさんは、1909年11月生まれで現在101歳。毎日日記を書き続け、絵を描いたり詩を詠んだり。 また、100歳にして新たな詩集も刊行しました。とても元気なまどさん。この本には、そんな まどさんの元気の源ともいえる言葉がたくさん書かれています。
・私にとってのふるさとは、はるか地球の中心のほう、引力の方向なんです。
・他の人にとっての常識が、私にとっては、はっとするような発見なのです。
・なんでも、どんなことでも、興味を持たずにはいられません。
・何かに対してハッとしたら、自分で考え続けます。
・子どもはほんとに言葉の天才です。語彙は少ないけどその少ない言葉を自由自在に操ります。
・私の詩は、「今日はこのように生きました。」っちゅう自然や宇宙にあてた報告なのです。
・この世のものはそこにいるだけ、あるだけで尊いものなんです。
・この世は人間だけのものじゃない。人間だけが幸せなんてありえない。もっと謙虚でいて いいんじゃないでしょうか。などなど
 今日も日々、みずみずしい言葉を芽吹かせ続けるまどさん。多くの人の心を、やさしく、 強く、新しくしてくれます。それが100年の人生を生きてきた人の力ではないでしょうか。

●まどさんに聞きました
・「幸せ」ってなに?
自分が生きている現在  その現在を肯定的にみることができる人は幸せだと思います。 人間だけでなく、すべての生き物が生きているんだから、それら全部に感謝しながら・・・ 暮らしていく、それが幸せ。
・行きたいところがありますか?
宇宙です。行けたらいいですねえ・・。 まどさんのように子供の純粋な心と、日々新たな発見をしての驚き、そして大きな夢を持ち続ける ことなど、人生の生き方を考えさせられた本でした。
 点字、デイジーなし(製作を希望される方は当館へお申出ください。)


■2011年12月号 斉藤五月(さいとうさつき)委員

「青森ドロップキッカーズ」 森沢 明夫著


 一人で食べるパンよりも あなたと半分ずつにしたパンの方がおいしいね・・・。
 タイトルは「ドロップキッカーズ」って、プロレス関係の話?なんて思ってしまいそうですが、 あったかくて優しい一行から始まります。
 おばあちゃん子の優しい宏海(ひろみ)は学校でいじめに合いますが、カーリングと出会い、その カーリングを通して仲間と出会い少しずつ成長していきます。
 「一番大切なことは最初の一歩をちょんと踏み出せるかどうか。ゼロと1の差は限りなく大きい…。」  結局、宏海は中学から始めたカーリングを高校に入っても続けます。
 そして、1年生ながらも、幼なじみの雄大とともに、全国高等学校カーリング選手権大会に出場。
 「優勝!」のその瞬間…。
 森沢明夫さんと言えば、「津軽百年食堂」が映画化されて有名ですが、私が初めて読んだ本が、この 「青森ドロップキッカーズ」で、全然知らない作家さんでした。
 なぜこの本を読もうと思ったのか?今でもわかりませんが、本当に良い本に出逢えたと思っています。
 カーリングのルールは全然わからない私でしたが、チームの仲間を信じること、選手は違反をした時、 自ら申告するなど、「カーリング精神」に感動しました。
 そして、これからもっとカーリングを楽しく観られそうな気がします。
 文章の中には、勇気が出たり、心が暖かくなったりする言葉が沢山出てきますよ。
 ホッと笑顔になったり、心がグッと熱くなったり、ドキドキしたり、泣き笑いの一冊です。
 まだこの本に出合われていない方に、ぜひ出逢っていただきたいと思います。
 点字3冊 デイジー6:32


■2011年10月号 鈴木桂子(すずきけいこ)委員

「啄木と郁雨(いくう)」―友の恋歌 矢車の花― 山下多恵子 (やました たえこ)著


 石川啄木の歌集「一握の砂」が刊行されたのは1910年。昨年はちょうど100年目にあたります。
  いのちなき砂のかなしさよ
  さらさらと
  握れば指のあいだより落つ
 歌集「一握の砂」「悲しき玩具」の歌人、石川啄木を知らない人はいないでしょう。
 宮崎郁雨(本名・大四郎)は、その啄木が死ぬ前年まで一家の生活を経済的に支え続けた一歳上の 友人です。越後荒川村(現・新発田市)に生まれ、五歳の春両親とともに函館に移住し、やがて 味噌製造業で成功した家の跡を継ぎ、函館の名士に数えられるまでになります。さらに啄木の勧めで 啄木の妻節子の妹を妻にして二人の義弟となった郁雨。
 本書はこの二人の友情を軸に、啄木と節子との深い信頼、やがて経済的援助者となるに及んでの 微妙な屈折、家族の不和、啄木の思想的文学的前進、その矢先に襲われた病魔。さらに郁雨が 匿名で出した節子への手紙に激怒した啄木と郁雨との義絶。それぞれが複雑な思いを内に秘めて 生きた切なくきびしい人生をそれら一人一人に心を寄せて印象深い文章によって描かれています。  「一握の砂」の背後に存在した人間ドラマを啄木の歌の鑑賞とともに是非お読みいただきたい 一冊です。


■2011年2月号 石川登志子(いしかわとしこ)委員

『あの日にかえりたい』 乾ルカ(いぬいるか)著
2010年 第143回直木賞候補作


 もしも過去に帰れるなら、あなたはいつの"あの日"に帰りたいですか?あの日あの出来事がなかったら、 あの日に他の行動をしていたら、などと切なく思い返す遠い日があなたにあるなら、その日に帰ってやり直してみますか?
 そんなこと出来るわけがないし、何度やり直しても結果は同じなのでしょうが、「あの日に帰りたい」は時空を 超えて過去の出来事に遭遇する物語です。
 北海道が舞台の6編の短編集で、収録内容は、「真夜中の動物園」、「翔る少年」、「あの日にかえりたい」、 「へび玉」、「did not finish」、「夜、あるく」。どの話も小さな奇跡が起きて、傷ついた心をそっと癒してくれます。
 この本を選んだもう一つのわけは、著者名にあります。著者の乾ルカさんはとても犬好きで、「家に犬がいるから」を こじつけてペンネームを「いぬいるか」にしたのだそうです。
 最近、盲導犬と暮らし始めた私は賢くて従順な犬の虜になりつつあり、今回は犬好きの著者の本を選ばせてもらいました。
 点字製作中 デイジー6:39


■2010年10月号 渡辺勇(わたなべいさむ)委員

『武家用心集』 乙川優三郎(おとかわゆうざぶろう)著 集英社


 不自由な武家社会の中で、不測の事態を切り抜けてゆく人々を描いた短編八編の小説集です。この中の一編、 田蔵田半右衛門(たくらだはんえもん)を紹介します。
 田蔵田半右衛門の田蔵田(たくらだ)はあだ名で、本当の性は蔵田(くらた)という。「田蔵田」とは、 じゃこう鹿によく似た動物で、じゃこう鹿の狩りの際に、ちょっとした音で飛び出して代わりに殺される獣のことで、 人に用いられる場合は愚か者を意味する。
 半右衛門が蔵田家へ婿入りした時は、70石(こく)の禄高(ろくだか)と郡奉行(こおりぶぎょう)だった。 しかし、自分の不注意で友人の犯した不正事件に巻き込まれ、30石の減石と植木奉行への役変えになってしまった。 この不正事件での半右衛門の行動の愚かさが、世間の人から「田蔵田」とあだ名されるようになったのである。
 減石で家庭の台所は苦しくなったが、半右衛門は植木などの見回りが済むとノンビリと大好きな釣りを楽しんでいた。 ところがある日、兄の今村勇蔵(いまむらゆうぞう)が、家老大須賀十郎(おおすがじゅうろう)の暗殺を持ち込んできた。 半右衛門は不正事件に巻き込まれてから、物事に慎重に構えるようになっていたので、勇蔵の誘いには即答せず密かに 探索をしてみたのである。
 家老の大須賀は、洪水時の田畑の冠水を防ぐため、村の真ん中を流れる水立川(みずたちがわ)を掘り抜き、悪水を 海へ流す難工事を僅か5年で、かつ4万両もかかる費用を僅か1万6千両でやり遂げた。これらの功績から民・百姓や 大多数の武士に至るまでの人気が高まり、飛ぶ鳥を落とす台頭ぶりであった。それを妬んだのが、筆頭家老の奥村岩右衛門 (おくむらいわえもん)、家老職にありながら私利私欲にうつつを抜かすような、誰が見ても典型的な悪家老である。 この悪家老が大須賀の粗を探しその排斥を企てて動き出したのであった。
 この企てに引き込まれそうになる田蔵田半右衛門、如何にしてこの難を切り抜けるか、そして愚か者のあだ名「田蔵田」 を返上することができるか、後の結末は読んで確かめてみてください。
 点字5冊 デイジー7:04  録音6巻


■2010年8月号 市川能里子(いちかわのりこ)委員

『優しい悪魔』垣谷美雨(かきやみう)著 実業之日本社


 ハッキリ言って、禁煙奮闘記です。
 読んでみてこれはイケると思ったら、禁煙方法を追求している友達に紹介しようと思ったのです。 しかしその友達は「これぞと思う禁煙本を読むと、うれしさのあまり一服吸いたくなるのよね!」という人 なんですけど・・・そして、この本は、確かにイケてました!
 禁煙にトライする主人公は、夫と中学生の娘と暮らす働くお母さん。ヘビースモーカーの彼女が、 会社や娘の学校の保護者会、夫の実家などで煙草を吸いたいという衝動と戦う様子や、煙草を吸うTPOを 求めて苦労する様子が笑いを誘います。
 これではいかんと始めた禁煙は、20年の歴史をもっています。あらゆる禁煙本を読み漁り、禁煙に 成功した人のやり方を聞いて実行してみますが、まるでだめ。なかでも「喫煙者は、肺がんになって苦しんで死ぬ」と 聞かされても、「止めるどころかその不安から逃れるためにますます煙草を吸う」という件には、読者として あきれてしまいました。最後の頼みとして「禁煙外来」なるものの扉を叩き、他者から禁煙させてもらおうと思います。 しかし、そこのドクターがまたいろいろあって・・・・・
 遂に、彼女は他の人はどうであれ、自分だけのやり方を見つけ、挑戦していきます。そして見事に成功するのです。
 そのやり方は、どうぞこの本を読んで納得していただきたいのですが、これって、甘いものを食べるのを 止めたいとか、他の悪しき習慣を止めたい時に使えるなって思いました。もし皆さんがそういったものを 抱えているなら、主人公のようなやり方でトライして、成功した暁には、彼女同様大いに自分を誉めてあげましょう。
  点字4冊  デイジー 7:16  録音5巻


■2010年6月号 滝沢和子(たきざわかずこ)委員

『風の耳朶』灰谷 健次郎著


 2002年1月第二刷という少し古い話になりますが、「風の耳朶」を紹介したいと思います。
 当時、著者灰谷健次郎さんは「書き上げてみて、これは自分の中でもかけがえのない作品に なったなあ、と思いました。」「若い人たちにぜひ読んでほしいですね。」と将来を担う人たちへの期待と 希望を込めています。
 物語は85歳の反骨の画家藤三と7つ年下の妻ハルの、なぞめいた旅を軸に展開します。旧友宅を訪ね、 東京の原宿、渋谷、信州の戦没画学生の遺品を集めた美術館「無言館」へ。そして越後の良寛さんへと・・・。
 この本を読んで、心に残った言葉のいくつかを拾ってみます。
○「・・・人間のつながりは、すべて友情で結ばれた方がいいんだって。友だち同志はもちろんだけど、 親子も夫婦も恋人同志も、・・・
その友情の根っこにあるものは、相手に対する尊敬の念だって。尊敬はどんな小さなことでもいいんですってよ。」
○「神様はやさしさを、耳朶にお詰めになったんですよ。・・・風というのは、ふだん、あるかないかと いうようなものでしょう。・・・そんなこまやかなところにある耳朶を見つける心って、素敵と思いません?」
○「人は生きているあいだの振舞いにいさぎよさというものがあったとしても、・・・あるのは、ありのままを、 ただ、ていねいに生きさせていただくということしかないのですね。」

 昨夏、友だちと念願だった無言館を訪ねることができました。この無言館で藤三たちと会話を交わしているよ うな錯覚におちいったりしながら展示物を観てまわり、多くのことを知ることができました。機会を得て再度無言館へ、 何度か訪ねたことがありますが五合庵へもまた行きたいとの思いを強くしています。
  点字5冊 デイジー 8:05 録音6巻


■2010年4月号 平井美和(ひらいみわ)委員

『筆談ホステス』斉藤 理恵著


 読書は、私にとって心の栄養だと思います。いろいろな登場人物になりきって読むので、 私は、実話が本になったものを読むのが好きです。
 今回は、『筆談ホステス』という本を紹介します。ホステスというと、えーちょっと、と 思われる方もいると思いますが、この本は、青森で少しぐれていた、耳の全く聞こえない 女の子がホステスとなり、筆談だけでお客さんをいやし、やがて東京の銀座で一番の ホステスになるという話で、実際にあった話です。初めはテレビでドラマ化したのを見て、 この本のことを知り、ぜひ読んでみたいと思い、テレビで見た次の日に書店で購入しました。
 この本の中には、いろいろな方の励ましの言葉や心に残るいい言葉が出てきます。 私には、なぜか、「恋という字は心が下にあるから下心、愛という字は心が真ん中にあるから 真心」という言葉が心に残りました。ほかにも、有名人の言葉などを引用しています。
 障害者が、今の世の中、何か仕事をして生きていくのは大変なことです。私もマッサージなどを 出張専門でしているのですが、私はつらくなった時、この本を読み返して、自分を励ましたいと 思いました。
 点字3冊 デイジー4:29 録音3巻


■2010年2月号 石川登志子(いしかわとしこ)委員

『レインツリーの国 World of delight』有川 浩著 


 他の人に本を薦めるのって難しいのですよね。 それぞれに好みがあるから、私が好きな本が誰にでも興味があるとは限りませんものね。 私も友人に「最高におもしろかった!」と薦められて読み始めても、途中で投げ出す ことがたびたびあります。だけど、たまには大当たりすることもありますので、苦手の ジャンルと毛嫌いしないで、ともかくページをめくってみてくださいね。 「馬には乗ってみよ人には添うてみよ、そして本は読んでみよ」です。
 さて、今回のお薦め本は有川浩著「レインツリーの国」です。ある本がきっかけで メール交換が始まり、やがて恋が芽生える話。ですが、ただの恋愛小説と違うのは、 女の子が耳の聞こえにくい障害を持っていたこと。メールではスムーズに会話が できたのに、実際に会って話してみると、彼女の反応はどこ かチグハグで不自然。相手の口元をじっと見つめて、言葉を発するのに一つテンポが 遅れる。それは、彼女の聴覚に障害があったから。それを知っても好きだという気持ちの 変わらない彼は障害の間合いを必死でつかもうとしますが、彼の行為はいつも裏目に出て、 彼女はますますかたくなに自己の世界に閉じこもってしまいます。踏み込めそうで 踏み込めないもどかしさ、劣等感とプライドの間を揺れる心、そんな感情をぶつけ合う 二人のメールの応酬合戦は激烈で、いくつかの悪態は私にも心当たりがあってギクリと しました。どんなに好きでも相手を完全に理解することなどできるはずがない、ましてや、 健康な人が障害を持った人の複雑な心理状態など分かるわけがない、そんな意地悪な気持ちで 読み進みました。そして、その結末は・・?それは自分で確かめてくださいね。
 これを読み終えたら、有川さんの他の作品もきっと読みたくなるはずです。 軽快なテンポでサラリと読めて、読後感は抜群です。
 なお、「レインツリーの国」は「図書館内乱」とリンクしていますので、よかったら そちらもどうぞ。
 下記は、私が読んだ有川さんの作品の中で好きな順番です。 読書好きの仲間が絶賛していた「図書館戦争」を一番に持ってきたいところですが、 私とはあまり相性がよくありませんでした。ジェネレーションギャップかな?って ちょっとショックでした。
『フリーター、家を買う。』『三匹のおっさん』『阪急電車』『クジラの彼』 『ラブコメ今昔』『海の底』『空の中』『図書館戦争』
点字3冊 デイジー4:37 カセット4巻


■2009年12月号 小林みつ子(こばやしみつこ)委員

『マディソン郡の橋』ロバート・ジェームズ・ウォラー著 村松 潔訳


 15年程前に一時ブームになった本です。
 アイオワ州マディソン郡の片田舎で暮す農夫の妻であり、母であるフランチェスカ・ジョンソンと 写真家ロバート・キンケイドとの恋の物語です。
 二人が過ごしたのは、僅か4日間です。その後一度も会うことも話すこともありませんが、 お互い同じ想いでそれぞれの一生を終えます。最後は思い出のローズマンブリッジ付近で灰と なって再会です。それまでの過程、すべてが美しく、そしてやさしく表現されているように 感じます。何とも切なく、ロマンチストにも、しかし現実は・・・と読まれる方にも、人それぞれと 思います。
 以前に読まれた方は、また違った感傷にひたることができると思いますし、初めての方にも おすすめできる本と思います。
点字3冊 デイジー5:52 カセット7巻


『新潟樽きぬた−明和義人口伝―』火坂 雅志著 


 10月10日に開幕した第9回「トキめき新潟大会」の前日、皇太子殿下が新潟入りし、「新潟県選手団 激励会」に出席されました。その時、「新潟樽きぬた」を演奏されたことを知り、早速、この本を手に取りました。
 明和5年、庶民の苦しい暮らしを横目に利益を独占していた一部の特権商人への町民の怒りが 爆発し、涌井藤四郎を先頭に町民が一揆を起こす“新潟湊騒動”をもとにした小説です。
 湊新潟の発展や歴史を物語っています。町や堀の様子、そして新潟花街(かがい)の中心である 古町の様子なども書かれています。新潟樽きぬたについてもよく知ることができます。
 主人公涌井藤四郎と古町一の樽きぬたの名手と言われたお雪との場面も情緒があり、 新潟ならではの風情を感じられるのではないでしょうか。
 火坂氏の「義」をつらぬく思いが込められた本と思います。
点字2冊  デイジー3:43 カセット3巻


■2009年10月号 渡辺勇(わたなべいさむ)委員

『家守綺譚(いえもりきたん)』梨木香歩(なしきかほ)著


 舞台は今から100年前、駆け出しの物書き綿貫征四郎(わたし)はひょんな 事から親友の家を守ることになった。彼の名は高堂(こうどう)といった。 高堂は湖でボートを漕いでいるうちに行方不明になった。その彼がわたしの もとへ訪れるようになったのは、ある嵐の晩からである。それも床の間に 掛けてある掛け軸の湖をボートでやってきたのである。「庭のサルスベリがお前 に懸想しているぞ。あれは存外話好きだから時々本を読んでやれ」という。 そう言われてみればわたしも物書きのはしくれ、そのくらいのことならできない ことはない。
 和尚がすき焼きをごちそうにするから松茸を取って来いと言うので我が家に 居ついた犬のゴローを連れて裏山に入った。不意にゴローが居なくなった と思う間もなく、病人らしい尼さんを連れて戻ってきた。急いで本堂へ連れ込み 寝かせると七転八倒の苦しみで、どうしようとうろうろしているわたしに 「南無妙法蓮華経を唱えながら体をさすってくだされ」という。言われた ようにしてやると、次から次へと恐ろしい化け物に変身するのである。古狸が 野山をうろつきまわっているうちに野垂れ死にした怨霊を背負い込み、どうにも ならなくなると寺へ駆け込むのだという。
 こうして綿貫征四郎は、いかなる化け物達と付き合っていくのだろう。
点字3冊  デイジー4:28  カセット5巻


■2009年8月号 林章子(はやしあやこ)委員

『「アンのゆりかご」村岡花子の生涯』村岡恵理著


 カナダのプリンス・エドワード島を舞台とする、モンゴメリー作「赤毛のアン」 (原題「アン・オブ・グリン・ゲイブルス」)は、1952(昭和27)年、村岡花子の 翻訳で出版されてから現在に至るまで、多くの日本人に親しまれ読み継がれてきています。
 本書は、その翻訳家「村岡花子」の評伝であり、この作品成立までの舞台裏が、 孫である村岡恵理の目を通して、花子の人間性や生き方とあわせて克明に描かれています。
 ミッションスクール東洋英和学院でのカナダ人宣教師との出会いが、英語や英文学に 接するきっかけとなり、人間性を尊重する思想との出会いにもなった。戦時色が濃くなり、 カナダ人宣教師が帰国を余儀なくされたとき、「赤毛のアン」を託された花子は、 戦中の厳しい社会情勢の中、翻訳を続け完成させる。
それが戦後7年経ってようやく出版されることになり一躍脚光をあびることとなる・・・・。 以後昭和34年まで7年がかりで10冊のアンシリーズを翻訳出版。ほかにもエミリー三部作、 「丘の上のジェーン」「果樹園のセレナーデ」などモンゴメリーの作品21冊、ウィーダ作 「フランダースの犬」ディケンズ作「クリスマス・カロル」など私たちが子供の頃から 親しんできた作品の中に花子の手によるものがたくさんあります。
 著者は、祖母花子の、人間として強い信念を持ち翻訳にかける姿を孫の目で 捉えて描いています。著者は現在、姉の美枝と共に東京・大森の自宅で 「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」を主宰しています。
点字 5冊  デイジー 11:01


■2009年6月号 市川能里子(いちかわのりこ)委員

『夫婦一年生』朝倉 かすみ著


 結婚ていいものです。喜びは二倍になるし、悲しみはなぜか半分になります。 それは人生を分かち合い、寄り添い合う人がいるから・・・と私は思っているの ですが、結婚して何十年も経つと、私の友達の中には「喜びは半減、悲しみは 百倍、顔も見るのもイヤ!」と言う人もいます。悲しいなぁ・・・。
 結婚後何十年の人はともかく、若いうちから結婚をためらう人たちに読んで もらいたいのが、この『夫婦一年生』です。
 新婚カップルのほのぼのとした日常生活を描いた本ですが、二人とも30歳を 超えており、自己が確立しているゆえの考え方、感じ方の微妙な違いなども 書かれています。
 猛々しさを失いつつある「草食系男子」や、朱鷺に象徴されるように夢と 冒険を求めて羽ばたく女の子が増えている中で、若い男女が結ばれにくく、 たとえ恋人がいるとしても、相手や相手の家族の人生まで引き受けるのはとても たいへんなことで、結婚に向かうのは億劫なことかもしれません。
 でも、そんなためらいを吹き飛ばし、「ああ、結婚ていいな」と思わせてくれる のが、この本です。結婚前の人は真剣に、結婚後何十年の人はニヤニヤしながら 是非読んでみてください。
点字 製作中 デイジー5:36 カセット4巻


■2009年4月号 滝沢和子(たきざわかずこ)委員

『知らなかった!驚いた!日本全国「県境」の謎』浅井 建爾著


 平成20年8月27日の新潟日報に1871年の廃藩置県以来、未画定になっていた 十和田湖の青森・秋田県境が約140年の年月を経て画定する見通しとなった。 という記事が・・・。折しも、店頭には、『知らなかった!驚いた!日本 全国「県境」の謎』という文庫本が並んでいました。「奈良県が地図から 消えた」とか「石川県は人口日本一の大県だった」など思わずエッ?ほんとう? ウソー?と。読んでみてなるほど、そうだったのかと頷いてしまいました。
 『U県境に秘められた歴史』の中には「伊豆諸島はなぜ静岡県でなく 東京都なの?」「長野と静岡の県境は毎年移動する?」などこれまた興味を引く タイトルが数多く並んでいます。
 新潟県に関する記述もありました。『Wニッポン横断をめぐる争い』の中の、 「日本一摩訶不思議な福島・山形・新潟三県の県境」がそれです。新潟と 山形両県の境目を割り裂き飯豊山頂を目指して、並行した2本の県境がニョキ ニョキと伸びているというのです。幅は約3尺、ひと跨ぎで新潟県から福島県を 通り越して山形県に着地できる場所が延々と7.5キロも続くというのですから 全くの驚きです。
 「県境」単なる行政上の境界線と思いきや、この曲がりくねった一筋の線が 引かれるまでに繰り広げられてきた悲喜こもごものドラマ、思わず誰かに 話したくなるような多くのエピソードが満載された面白本。お勧めです。
点字 製作中 デイジー5:20


『土恋』 津村 節子著

 知人から旗野窯を案内してもらい、お茶碗を一つ作りました。その時三姉妹が 力を合わせて作業している様子を見せてもらったり、「本当に使い易い焼き物を 作り続けた」という先代のお話を聞かせてもらいました。
 「土恋」は庵地焼きをテーマにした小説です。台風や詐欺にあいながらも土を 作りろくろを回す啓一とそれを支えるみほ、昭和30年ころの新潟や安田 (現阿賀野市)の暮らしぶりや祭り、方言、人情などが綴られています。
 なにか懐かしく、皆さんにも読んでほしいと思いました。
点字 3冊 カセット6巻 デイジー6:06
 


■2009年2月号 根津陽子(ねつようこ)委員

『新潟ゆかりの書 あれこれ』

(1)『北の王国』童門 冬二著
 始まりましたね、NHKの大河ドラマ「天地人」。このドラマの主人公、直江兼続を知ったのは、『北の王国』からです。優れた知性と高い見識、すがすがしい人柄と温かい人間性で藩主を支え続けた家老、直江兼続。 太閤秀吉には敬愛され、徳川家康に恐れられた名将、兼続公。火坂雅志著『天地人』は長編ですが、『北の王国』は読み切りサイズですので、時間のない方におすすめできます。


(2)『安吾碑を彫る』丸山 一著
 近代文学の祖といわれる坂口安吾。新潟護国神社の境内にある、日本一と いわれる文学碑―この文学碑に携わった人たちのドキュメンタリーです。 昭和30年代の初め、まだ重機などありません。五頭山の山から、22トンと 15トンの石が人力で火を噴きながら下ろされます。どの場面も、どの作業も 胸をつきます。坂口安吾の『堕落論』や虚無主義からは対極にいる人たちの熱い ドラマです。


(3)『朱鷺のキンちゃん空を飛ぶ』新井 満著
 朱鷺の放鳥は明るいニュースでしたね。この作品は、朱鷺のキンちゃんと 飼育係の心の交流をつづったものです。短編ですが、読後感は悠久を感じます。 心に奥行もくれました。終わりはハンカチをお忘れなく。


『北の王国』上・下 点字各7冊、カセット上11巻・下10巻 デイジー 上9:51・下9:22
『安吾碑を彫る』点字製作中、カセット6巻、デイジー7:22
『朱鷺のキンちゃん空を飛ぶ』 点字1冊、デイジー1:50


■2008年12月号 石川登志子(いしかわとしこ)委員

『役に立たない日々』佐野洋子著
 ねぇ、あなたが小さかった頃、30歳以上の人は全部おじさんやおばさんに見えませんでしたか?60歳を過ぎた人なんか完全に老人で、そんな年にいつか自分もなるなんて、想像もしなかったでしょ。ところがね、時の流れには逆らえない、誰だって否応なしに年をとってしまいます。
 人の名前が思い出せない、約束したことをきれいさっぱり忘れる、台所へ物を取りに行って、はて?何を取りに来たのかと立ちすくむ、昨日と今日が混沌としている・・・。そんなこんなの出来事を、佐野さんは「役に立たない日々」の中でワハハッと笑い飛ばし、ぼけつつある老人のリポートとしてご参考になさってなどと書いています。
 ユーモアと名言がいっぱい詰まったエッセー集ですが、本書の中で自分ががんで余命2年だと告白していて、そのあっけらかんとした物言いがかえって痛烈で、切なく悲しく響きました。
 悪態をつき、友達と大喧嘩し、好き勝手に振る舞う、一見わがまま放題の佐野さんの毎日ですが、どうせ老いてどうせ死ぬなら、私もこんな風に芯のある生き方をしたいなと思いました。
 佐野さんのエッセー集のタイトルはどれもユニークで、「私はそうは思わない」「友だちは無駄である」「ふつうがえらい」「あれも嫌いこれも好き」「神も仏もありませぬ」など多数出版されています。最近のものでは、お母さんのことを書いた「シズコさん」もお薦めです。
 そうそう、彼女を「100万回生きたねこ」や「だってだってのおばあさん」などの絵本作家としてご存知の方も多いでしょうね。
 絵本を子供と読んでいた時には感じませんでしたが、今になって読み返してみたら、自分の場所をずっと探している猫や、「だってだって」と言い訳ばかりしているおばあさんが何だかとても愛おしくなりました。
デイジー 5時間58分 カセット5巻 点字製作中


■2008年10月号 平井美和(ひらいみわ)委員

絵本
『あしにょきにょき』深見春夫著(岩崎書店)
『ふわふわくもパン』ペクヒナ著(小学館)
『みかんのひみつ』鈴木伸一監修(ひさかたチャイルド)
 私は、読書が大好きです。それは、心を豊かにしてくれるからです。私は、4歳から20歳まで、親元を離れ施設で育ちました。
 私は、人と話すのが苦手でした。施設の、ある先生が、夜勤日に私達の部屋で本を読んでくれました。そのことが毎回楽しみになって、自分でも本を読むようになり、本好きになりました。
 本は、一人でもどこでも楽しめるもので、読んでいると自分がストーリーの中の主人公になったような体験もできます。本を読んでいると、本当にそうしたいと思ったり、実際にその場所を訪れてみたくもなりますし、言葉を通して、表現の仕方や考え方を学んだり、時には、人生さえも変えてしまうことがあるので、読書はものすごく素晴らしいことだと思います。
 今、本を読まない人が増えていますが、私は、親は我が子が小さいうちからきちんと本を読んであげて、それもわざわざ読むのではなく、そう、自然と読む、携帯電話を持つような感覚で「これ私の愛読書なの」というふうになったらいいと思います。だから、私の家には絵本が沢山あります。小さな子供をひざにのせて絵本を読んでいる時は、とても幸せな時間です。
(当館から)
 現在、上記3タイトルとも点訳、音訳されたものがないため、今後、当館で製作する予定です。


■2008年8月号 小林みつ子委員

『幕下りるときー新潟70人の生きざま』新潟日報社編
 新潟にゆかりのある人70人がどのように生き、終幕を迎えたかを証言や史料などでつづった評伝です。
 さまざまな分野の方が登場します。  「キイ子なくして学匠会津八一なし」と記されている会津キイ子さん。
 川端康成の小説「雪国」で駒子のモデルになった人。ふる里へ帰ってからは川端康成のことは口に出すことはなかったと言われます。しかし、・・・。
 紅白出場を夢見、あと一歩という時に病に倒れた旧荒川町出身の村上幸子さん。
 陸軍特攻隊の松崎義勝さん(小千谷市出身)が最後に送った母への手紙。
 奇術師のアダチ龍光さんは、母校鹿瀬小学校百周年記念誌に故郷への尽きない思いを寄せています。
 等々、陰の力になった人やあまり知られていない人の事も詳しく描かれていてお一人お一人の人生そのものに感動し、また、その時代背景も知ることができ、興味をそそられるのではないでしょうか。
 証言する人も家族や親戚・知人などの生の声を聞いてまとめられていますので、登場人物をより身近に感じ、楽しめると思います。
 関心のある所だけでも読むことができ、おすすめしたい一冊です。
点字 5冊 デイジー製作中


■2008年6月号 渡辺勇(わたなべいさむ)委員

『斬(ざん)』 著者:綱淵謙錠(つなぶちけんじょう)
 「それでは、母上行って参ります」と、澄んだ声が山田家の玄関に聞こえた。この家の三男吉亮(よしふさ)である。今日は吉亮にとって初めて死罪人の首をはねる日なのである。
 父は、首切り役人として七代目になる山田浅右衛門吉利である。彼には、4人の男児がいる。彼は、山田家を継ぐものは三男吉亮をおいてないと心に決めている。
 吉亮は、父吉利と長男吉豊に付き添われて刑場へ入った。父は、奉行所へ吉亮のことを15歳と偽っているが、まだ12歳の少年なのである。吉亮がその日処刑するのは、町医者村松英斎の息子英山である。まだ17歳の少年がどんな罪を犯し死罪になるのか、首切り役人が知るわけもない、また、知る必要もないのだ。
 吉亮は、静かにとが人の左脇に立った。すると、頭の中にねずみが走り出した。道場の床を走り回るねずみを切り捨てる修業を続けて会得した山田流居合術の極意だ。頭の中を駆け回るねずみが停止した瞬間、腰を捻って少年の首を切り落としていた。血溜まりの中へゴツンと音をたてた時から少年の心臓の鼓動とともに頸動脈からピューピューと勢いよく吹き出した血は血溜まりを越えて飛んだ。
 吉亮がその後、17年間に切った首は、300人にも及んだという。しかし、天才的吉亮もたった一度、失敗している。それは、高橋お伝の時だったのである。これを機に斬首の刑は、ほぼ終わりを告げたと言われている。
点字6冊  デイジー1巻(14時間45分) カセット8巻


■2008年4月号 大井京子(おおいきょうこ)委員

 源氏物語へ連れてってくれる本
 『痛快!寂聴源氏塾』瀬戸内寂聴著 がお勧めです
 今年は「源氏物語」1000年紀ということで源氏ブームが起こっています。でもあまりに壮大すぎて、と敬遠される向きもあるかも知れません。そんな方には新潟で製作されたデイジー図書『痛快!寂聴源氏塾』がお勧めです。
 あの「源氏物語54帖」が10時間ほどのCDに程よく収められているのです。物語のあら筋と共に重要な場面々々が寂聴さんの解説付きで描写されるので、話の展開がしっかり頭に入ります。10時間の講演を聴いている感じです。
 「源氏といえば華やかな女性遍歴を描く王朝絵巻風の物語と思われているがそれは第1部の話であって、実は源氏は第2部の『若菜』から読めばいいと言われるくらい源氏晩年の人生を描く2部は深刻で悩みも濃くなり読み手の心をとらえて離さない」と著者は言います。さらに「源氏の死後となる第3部の、とりわけ「『宇治十帖』と言われている最後の部分が本編よりも一番面白いと少女の頃に読んでそう感じた」と言うのです。
 その面白さはこの本のなかで充分に語られているので是非読んでわくわくしていただきたいと思います。
 こんな風に比較的よく知られた話のその先にこそ面白い展開が待っていると言われると1000年紀を機に是非全編を読んでみたいと思わされます。
 全編の現代語訳は瀬戸内寂聴のほか田辺聖子、円地文子などがあり、お好きな訳でデイジー図書又は点字図書を全国各地から借りることが出来ます。
 先ずは『痛快!寂聴源氏塾』です。これを道案内にして2008年があなたにとって1000年の時空を越える壮大な源氏の世界への旅立ちの年となりますように!!
デイジー 10時間9分


■2008年2月号 石川登志子(いしかわとしこ)委員

『タオル一本で家中ピッカピカ
  手間もお金も場所もいらないプロの方法』著者:沖 幸子

 お掃除、やる気はあるんだけど・・・、掃除道具だっていっぱいあるんだけど・・・、あれれ?あの掃除道具、どこへ片付けたのかな?ええい、面倒だ!明日にしよう。
 こんなことを繰り返している私が、タイトルに引かれて選んだ本です。目次には、「片付けられないあなたでも大丈夫!」とか「気分が乗らないときはやらなくたっていい」などとあり、これなら私でもできそう!って気になりました。
 掃除の基本、掃く、はたく、ふく、磨く、の全部がタオル1本で出来るって本当かな?と早速実践開始!ふく場所によってタオルを四つ折りにしたり半分にしたり、クルクルと巻いたり、手に巻き付けたりして、家具やガラスや台所や風呂場をふいてみました。
 お掃除ってのは、掃除の前のお片付けの儀式があるから、掃除嫌いになるのだそうで、それよりなにより、思った時が「そうじどき」。
 そして、まとめて全部を掃除しようと頑張らないこと。一箇所だけ集中してやり、時間も15分以内(疲れたらイヤになるものね)。身近にいつもタオルを置いて、思いついた時にササッとふく。
 さぁ、これで私も掃除上手になれるかな?
 著者の沖幸子さんは、生活評論家で、ハウスクリーニングサービスの「フラオ グルッペ」の社長。
デイジー 2時間5分


■2007年12月号 林章子(はやしあやこ)委員

『漢詩に遊ぶ 読んで楽しい七五訳』著者:松下 緑
 「春眠暁を覚えず」「春宵一刻値千金」「心頭滅却すれば火も亦涼し」。 これらは日常よく耳にする言葉ですが、いずれも漢詩の一節です。 漢詩といえばまず唐詩、そして李白と杜甫。李白の「静夜思」牀前月光を 看る 疑うらくは地上の霜かと・・・ 杜甫の「絶句」江は碧にして 鳥いよいよ白く・・・ 孟浩然の「春暁」春眠暁を覚えず処処蹄鳥を聞く ・・・などは、中学の教科書にもあり、よく知られている漢詩です。
 この本は、主に唐詩の中から日本人に親しまれている詩を取り上げ、 著者が戯訳しています。原詩をもじってパロディ化したり、美しい 日本語を使って、内容を現代の日本に置き換えたりしてうまく訳して います。また、井伏鱒二や佐藤春夫の訳詞も並べて載っているので、 原詩とともに比べて読むと面白さが倍加します。詩はリズムがあって 調子がいいので、声を出して読むとなお楽しいのではないでしょうか。 今、ボケ予防に音読が勧められています。漢詩と戯訳を声に出して 読みながら味わってみませんか。
デイジー5時間15分
(他の推薦図書)
「漢詩の人間学 詠み継がれる先達のこころ」著者:守屋 洋
カセット6巻 デイジー7時間46分
「唐詩選」上・中・下 編者:李攀竜
デイジー 各巻9時間〜12時間


■2007年10月号 根津陽子(ねつようこ)委員

『週刊トピックス悠久』長岡音声訳の会製作
   評判いいですよと、お聞きして早速私も送ってもらいました。以来、 トピックス悠久の大ファンになりました。
 テレビやラジオから耳にする日ごろのニュースは、暗く、おぞましく、 気持ちをいつも不安にし、不信感を募らせます。でもトピックス悠久は、 そんな気持ちを吹き飛ばしてくれます。日報、朝日、毎日、読売、産経 など、新聞数社からのバックアップ編集です。世の中の動きは勿論ですが、 季節のたよりや人々の心温まる言動スナップ、文明の先端をゆくのでは ないかと思わせる医療情報、産業技術、生活に密着している家電製品の 情報、料理、子育て、そして辛口に社説や論説、最後に川柳でウフフ。 吟味され収録された内容は充実しています。
 未知の世界へいざない、新しい気づきや知識などで頭も動き出します。 もしかして、ミラクルパワーが密かに吹き込まれているのでしょうか。 「ではまた次週までお元気で」のごあいさつに本当に元気でいなければと 思えてくるから不思議です。来週が待たれます。
録音雑誌 週刊 90分テープ1本


■2007年8月号 小林みつ子委員

『家族っていいなあ』著者:藤田市男
 新潟日報の連載エッセイを一冊にまとめたものです。一日の 何気ない出来事の中に家族とのつながりが綴ってあり、一コマ 一コマほのぼのとした感動を与えてくれます。
 子供たちや奥さんとのことは楽しく、つい笑ってしまいそうに なり、それでいてご両親のことにふれたところはやさしい想いが 読者に伝わり、目頭が熱くなる場面も度々です。
 また、ご近所や友人とのふれあいなど、一人でほほえんだり、 涙したりして一気に読み上げてしまいそうな、そんな一冊です。
点字2冊 録音図書 製作予定


■2007年6月号 渡辺勇(わたなべいさむ)委員

『猿飛佐助(さるとびさすけ)』著者:柴田錬三郎
    猿飛佐助を題材に多くの作家が書き上げているが、その中で 柴田錬三郎の著書が面白い。この作品の中では、佐助は 武田勝頼(たけだかつより)の子として描かれている。 老いた忍者、戸沢白雲斎(とざわはくうんさい)に育て 上げられた佐助は、真田昌幸(さなだまさゆき)との 運命的出会いから、のちに幸村(ゆきむら)の家来になるのであった。
 柴田作品では「真田幸村」や「赤い影法師」などの作品に 霧隠才蔵、百々地三太夫(ももちさんだゆう)なども描かれて おり、比較しても楽しめる。どの作品でも佐助は小柄、 才蔵は長身の美男子として描かれていることも興味深い。
「猿飛佐助」 点字6冊 カセット5巻 デイジー1巻(8時間54分)
「真田幸村」 カセット5巻 デイジー1巻(6時間25分)
「赤い影法師」 点字6冊 カセット8巻 いずれも柴田錬三郎著




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